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研究内容の紹介
個々の研究成果は業績のページも参考にしてください。

1. アポトーシスの分子機序の解析

 ヒトの体内では毎日500から700億の細胞が生み出されているといわれており、それとほぼ同数の細胞が死滅していることになります。しかもそのほとんどはアポトーシスとよばれる細胞死をおこしています。従ってアポトーシスの制御の乱れは様々な疾患を生ずると考えられます。すなわちアポトーシスが異常に抑制されれば癌、自己免疫疾患が発症し、逆に異常に亢進すれば神経変性疾患等が生じます。胎児の発生過程でアポトーシスの異常が起これば奇形が生ずる可能性があります。ヒトの疾患の約70%においてアポトーシスの異常が直接、あるいは間接的に関与しているという研究者もいるほどです。
 アポトーシスは線虫から哺乳動物まで保存されている遺伝子によって制御されています。なかでもヒトをはじめとする哺乳動物におけるアポトーシスには複数の遺伝子群が関わっており、各々の遺伝子群には多数の構造上類似するメンバーが見出されています。従って一つの遺伝子に異常が生じても他の類似の遺伝子が相補的にはたらくことが多いのですが、時間的あるいは空間的に、ある遺伝子が主役となって役割の大部分を演じていることがあります。この場合、単一遺伝子の異常で疾患が発症することになります。
 アポトーシスに関わる遺伝子群の中にはアポトーシスだけでなく炎症や免疫反応に関与するものがいくつもあることがわかってきました。このことは体内に病原体が侵入した際、感染した細胞を察知して速やかに細胞死を誘導して排除することで個体を守る巧妙な仕掛けを意味するのかもしれません。ミトコンドリアからチトクロームcが放出されて細胞死に至る経路(図1)も、大昔ミトコンドリアの元になる微生物が侵入した際、感染を受けた細胞を排除しようと努力したことが発端なのかもしれません。
 ヒトゲノムの解読が終了し、今後アポトーシスに重要な遺伝子が多数発見される可能性はないといえましょう。ただ、先ほど述べましたように、複数のメンバーをもつ遺伝子群が存在し、また1つの遺伝子からも複数の(ものによっては10種類以上の)、場合によっては相反する機能をもつアイソフォームが産生されることがあり、個々の遺伝子の機能については必ずしも解明されているわけではありません。
 当研究室ではアポトーシス実行遺伝子群であるカスパーゼファミリーや白血病にアポトーシスを誘導するグルココルチコイドの下流の遺伝子などを、分子生物学的、および細胞生物学的アプローチを用いて研究しています。



2. ヘッジホッグシグナル伝達とその異常で生じる疾患の解析

 ヘッジホッグシグナル伝達経路はショウジョウバエからヒトに至るまで進化的に保存されており、発生や発癌といった生理的、病的な生命現象において重要な役割を演じていることが明らかとなってきました。ですから、このシグナル伝達に関与するタンパクをコードする遺伝子の異常は様々な先天異常や癌の発症に関わっております。
 この経路は分泌型タンパク質であるソニックヘッジホッグ(Shh)がPatched-1(PTCH1)と呼ばれる受容体に結合することから始まります。ShhとPTCH1の結合によって、やはりShh受容体複合体のコンポーネントであるSmoothened(Smo)の抑制がはずれ、細胞内にシグナルが伝わり、最終的にGli転写因子を介して様々な標的遺伝子の転写が活性化され生理機能を発揮しています(図2)。PTCH1の配偶子変異は母斑基底細胞癌症候群(NBCCS)(Gorlin症候群とも呼ばれる)という小奇形と高発がんを特徴とする遺伝病を引き起こします。PTCH1は癌抑制遺伝子であることもわかっております。最近NBCCSとは全く異なる先天異常である全前脳症(HPE)でもこのPTCH1遺伝子に変異があることが報告されました。ヘッジホッグシグナル伝達経路の恒常的亢進がNBCCSの発症につながっていると考えられますが、HPEの発症機序はまだ良くわかっておりません。
 私たちはNBCCSとHPEの遺伝子解析を行うと共に、両疾患の発症機序の研究を行なっております。これらの研究に関しては北里大学医学部倫理委員会の承認を受けて行っております(受付番号B倫理08-03、B倫理08-04)。当研究室で見出されたNBCCSの遺伝子変異の一覧はこちらをご覧ください。



過去の卒業研究生の研究テーマ
  
  急性リンパ性白血病細胞株Nalm6を用いたカスパーゼ10遺伝子ノックアウト細胞株の作製(平成20年度、理学部生物科学科)
  抗PTCH1 モノクローナル抗体の作製と機能解析(平成21年度、理学部生物科学科)

  Gorlin症候群に好発する歯原性腫瘍の遺伝子解析(平成21年度、理学部生物科学科)
  RCAN1遺伝子ノックアウト細胞株を用いたグルココルチコイドによるアポトーシスの解析(平成21年度、理学部生物科学科)
  抗PTCH1モノクローナル抗体の特性の解析(平成22年度、理学部生物科学科)
  リアルタイムPCR法、及びMLPA法によるPTCH1のコピー数の解析(平成22年度、理学部生物科学科)
  グルココルチコイド誘導性アポトーシス経路に関与する遺伝子の解析(平成23年度、理学部生物科学科)
  CRISPR/Cas9を用いたヘッジホッグシグナルの構成分子を欠損する細胞株の作製(平成25年度、医療衛生学部健康科学科)
  CRISPR/Cas9を用いたHedgehogシグナル伝達経路関連遺伝子のノックアウト細胞作製と機能解析(平成25年度、理学部生物科   学科)

  一過性骨髄異常増殖症におけるGATA-1遺伝子変異の解析(平成27年度、理学部生物科学科)
  広範囲のゲノム欠損を有する高発癌性遺伝病の解析(平成27年度、理学部生物科学科)
  母斑基底細胞癌症候群におけるPTCH1遺伝子のモザイク変異の検出(平成28年度、理学部生物科学科)


過去の大学院生の研究テーマ

  RCAN1遺伝子ノックアウト細胞株を用いたグルココルチコイドによるアポトーシスの解析(平成23年度、修士)
  母斑基底細胞癌症候群で見出されたスプライシング変異と異常mRNAの分解(平成24年度、修士)
  ヘッジホッグシグナル伝達抑制分子SUFUの機能解析(平成24年度、修士)
  グルココルチコイド誘導性アポトーシス経路に関与するRCAN1遺伝子の解析(平成25年度、修士)
  母斑基底細胞癌症候群における角化嚢胞性歯原性腫瘍の発症機序の解析(平成25年度、博士)
  Gorlin症候群患者由来iPS細胞を用いた髄芽腫の作製(平成28年度、博士)
  マウスOct4のN末端のトランスアクチベーションドメインに存在する106番目のセリンはOct4の機能性に重要である(平成28年度、博士)
  Gorlin症候群責任遺伝子PTCH1のディープシークエンス解析(平成29年度、博士)
  CRISPR/Cas9システムを用いたNBCCS疾患モデルiPS細胞の作製(平成29年度、博士)


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