事例紹介

CASE 1

Aさん:当事者
Bさん:かかりつけの病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)
Cさん:Aさんの勤務先の人事担当者(衛生管理者)
Dさん:両立支援促進員(社会保険労務士)

某病院の神経内科にパーキンソン病で通院しているAさん(50歳、男性)は、某病院の医療相談窓口に就労のことで相談に来ました。 医療相談窓口の医療ソーシャルワーカー(MSW)のBさんは、Aさんの仕事の内容を詳しく聴取しました。 Aさんは、従業員規模が40人程度の自動車部品メーカーの下請け企業に勤務をしています。 高校卒業後、20年間製造現場で、金属を溶接する作業を担当していました。 Aさんは、10年前にパーキンソン病と診断されましたが、幸い治療が奏功し、これまで大きな問題はなく仕事を続けてきました。 しかし、最近薬のききが悪い時間がでてきて、仕事にも差しさわりがでてきたため、投薬を調整してもらっています。 主治医から、「薬のコントロールがもう少しうまくいけば、ききの悪い時間をなくせるかもしれませんよ」と言われています。 しかし、いろいろと副作用もでてきているため、今後仕事を続けることが出来るのか不安を感じていました。 また、あまり話してこなかった病気のことを会社にどのように伝えればよいか、悩んでいました。 Aさんの職場には産業保健職はいません。 Aさんはできれば今の仕事をできるだけ継続したいと考えていました。相談を受けたBさんは、まずは、治療費のことや休職した場合の傷病手当金のことなど、経済的な点を説明しました。 そのうえで、Aさんに対して、会社に対して病気のことを説明するように伝えました。 そのために、主治医に連絡をとり、会社に対して、どのような仕事であればできるかについて、できるだけAさんの仕事に即して「就労に関する意見書」を作成してもらいました。

Aさんが、Bさんからのアドバイスを踏まえて、主治医からの文書を持参して、職場の衛生担当である人事担当者のCさんに病気のことを報告しました。 Cさんは、初めて聞いた病名であり、戸惑っている様子でしたが、主治医からの意見書を読んで、症状に波があること、現時点では仕事ができるが、今後、できなくなる可能性もあることを理解しました。 ただ、Cさんは、職場としてどのように対応をすれば良いのか、不安を感じていました。

Aさんは、Cさんが不安を感じていることを、Bさんに伝えたところ、Bさんから、地元の産業保健総合支援センターの個別調整支援事業を紹介され、AさんからCさんに相談してみるように伝えるようにアドバイスを受けました。 そこで、AさんからCさんに、この件を相談したところ、Cさんも是非お願いをしたいとのことだったので、Bさんから産業保健総合支援センターに依頼しました。 そこで、両立支援促進員であるDさん(社会保険労務士)を紹介され、Dさんは、Aさんの勤務先を訪問し、職場の仕事の内容や就業規則を確認しました。 その内容を踏まえて、Aさんが、将来的には、溶接作業を離れて、管理や事務的な仕事に移行できるように、トレーニングをしていくような両立支援プランをCさんが作成するのをDさんは支援しました。

Aさんは、今後の見通しも立ったことから、仕事の継続に対する不安は軽減しました。 Cさんも、Aさんのこれまでの現場での経験を活かしつつ、計画的にAさんの配置転換が進められることから、会社が対応するべきことが明確になり、当初感じていた不安は軽減しました。 また、Dさんの支援で両立支援プランを作成したことは、中小企業である自社であっても専門家の意見をもらって工夫をすれば両立支援ができる、という自信につながりました。