RESEARCH CONTENTS

研究内容

医学部の研究室として、我々は、Curiosity-drivenな基礎研究と、Patient-drivenな橋渡し研究との両立を目指し、3人の教室スタッフと国内外との幅広い共同研究で、臨床遺伝学(clinical genetics)・神経科学・免疫学・系統発生学にまたがった分野横断的基礎研究と、臨床研究・規制医学・ELSI領域にまたがった包括的な臨床研究とによる、橋渡し研究とを行っています。

疾患領域には特にこだわらず活動していますが、現状では、聴覚、難聴遺伝、神経変性疾患、「見た目とエイジング」を主に活動しています。

ブレイクスルーは境界領域から生まれると信じており、これらの理念・活動に共鳴するあらゆる分野の研究者との共同研究を、広く募集しております。

橋渡し研究においては、基礎研究からの視点のみならず、臨床現場におけるニーズを大切にしています。教室主宰者である藤岡の20年来の経験と知識をベースとして、橋渡しの技術については「基本に忠実」を大原則としており、臨床的に意義のあるエンドポイント(clinically meaningful endpoint)を出発点としたTPP(Target Product Profile)の設定、マーケット評価とそのデザイン、ビジネス視点(リーンキャンバス構築や競合分析など)とELSI視点、そして何より患者さんに寄り添った疾患と病に悩む人・当事者・伴走者の声を、合理的かつ情熱的に「ごった煮」にして、基礎から応用、臨床研究までを一気通貫に推進しています。そのための知財戦略(特許とノウハウ、体制構築と契約交渉)は、大学法人臨床研究推進センターおよび産学連携知財推進本部との緊密な連携体制を敷いて臨んでいます。

企業との共同研究
その他、私たちの研究技術や研究シーズを起点とした、国内外の企業との共同研究を進めています。
・ノーベルファーマ株式会社:開発パイプライン(Pendred症候群)
・株式会社ケイファーマ:難聴疾患に関する学校法人北里研究所との共同研究契約延長のお知らせ(2025年3月28日)
・株式会社伊藤園:緑茶成分の加齢性難聴に対する有効性に関する産学共同研究(2024年1月22日)
・キリンホールディングス株式会社:内耳オルガノイドを用いた加齢性難聴に対する機能性素材の有効性に関する共同研究(2025年1月23日)
・株式会社坪田ラボ

RESEARCH
FIELD

研究分野

遺伝子治療やmRNA医薬の新規モダリティ研究

セントラルドグマに直接作用する医薬品は概して効果量が大きく、遺伝性疾患を中心とした様々な疾患で革新的医薬品をもたらしつつあります。当教室では、ナノテクノロジーを駆使し、AAVベクターやmRNA医薬の新規ドラッグデリバリーツールや担体の開発研究を進めるとともに、新規遺伝子編集技術の発明・発見に向けた基礎的探索研究を行っています。東京農工大や慶大理工、慈医大再生研などとのアカデミア間での境界領域連携や、企業との産学連携を積極的に推し進めるとともに、これらの研究が遅滞なく社会実装へ向かえるように、資金需要の大きい研究テーマについては、秘密保持契約下でベンチャーキャピタルなどの投資筋や国内外製薬企業と定期的に連携し、TPPベースでの研究領域策定と価値創造を心がけています。

※TPP: Target Product Profileの略

稀少遺伝性疾患に対するiPS創薬・遺伝子治療研究

当研究室ではこれまでに難聴領域を中心に、5疾患90ライン強の疾患特異的iPS細胞を有し(→お問い合わせはこちら)、分化誘導法や疾患メカニズムの研究から早期臨床研究までの基礎・臨床一体型研究を進めてまいりました。これらの過去の経験と実績を活用し、現在では、北里大学病院臨床研究推進センターを中心としたトランスレーショナル研究拠点や各臨床科(遺伝診療部:高田史男教授、耳鼻咽喉科・頭頸部外科:栗岡隆臣、山下拓両教授 など)、国内外の製薬企業などと連携をしながら、本邦の医薬品開発体制の特色・特長も考慮しつつ、幅広い疾患領域でアンメットニーズに特化した研究をしています。

Pendred症候群/DFNB4
慶應大学時代に、患者由来iPS細胞を用いた研究を行ってまいりました。北里大学病院/北里研究所病院における特定臨床研究を経て、現在ではこの橋渡し研究の導出先であるノーベルファーマ株式会社により、国際第3相試験を準備しております(ノーベルファーマ株式会社 開発パイプライン)。

DFNA10/EYA4関連難聴
世界のGWAS研究で難聴と一塩基多型(SNP)*1の相関が報告されてきているEYA4遺伝子に注目し、病的バリアント*2を有する遺伝性難聴(DFNA10)の患者様の末梢血からiPS細胞を作製し*3、iPS創薬と遺伝子治療の開発研究を進めております。

DFNA78
当教室の務台講師が世界に先駆けて発見した、常染色体顕性遺伝形式の非症候群性難聴(DFNA78)は、 SLC12A2遺伝子の特定領域に生じた変異を原因とする遺伝性難聴です。研究室ではDFNA78患者でみつかったものと同様の、「エクソン21領域」欠失マウスモデルを用い、 難聴の起きる仕組みを研究しています。この研究は、将来的な新規治療法の開発にもつながる可能性があります(→論文の紹介動画)。

ミトコンドリア病・ミトコンドリア遺伝性難聴
MT-TL1 m.3243A>Gバリアントを有するMELAS(ミトコンドリア病)や、MT-RNR1 m.1555A>Gバリアントに関連する非症候性難聴を対象として、患者由来iPS細胞を用いた研究を進めています。これらのiPS細胞から脳オルガノイドおよび内耳オルガノイドを作製し、ミトコンドリア機能異常が神経系や内耳に及ぼす影響を解析することで、組織特異的な病態形成機序の解明と、新たな治療薬候補の探索・開発を目指しています(→脳オルガノイド作製法の紹介動画)。

*1 一塩基多型(SNP):DNA配列のうち1塩基だけが人によって異なる部位。EYA4のSNPと加齢性難聴との関連は、大規模GWASで報告されています(Hoffmann TJ, et al. PLoS Genet. 2016;12(10):e1006371)。
*2 病的バリアント:病気の原因となる遺伝子の変化。EYA4の病的バリアントがDFNA10の原因であることは Wayne S, et al. Hum Mol Genet. 2001;10(3):195-200 で報告されました。
*3 Saegusa C, et al. Stem Cell Res. 2024;79:103489

加齢性難聴・アンチ/リバースエイジングに関する基礎・臨床一体型研究

かつて“自然経過”として生物学的研究現象が論じられてきた”加齢”という現象が、昨今、人類が直面する“疾患”と捉えられるようになっており、それに合わせて治療法探索研究(biomed)が世界では活発化しつつあります。 当研究チームでは、10年来培ってきた、高齢者コホート研究を含む臨床多層オミクス解析(慶大百寿センターとの共同研究)、東北メディカルメガバンク・東北大耳鼻科との統合GWASコホート研究や、霊長類研究、iPS細胞創薬研究に、様々なモデルマウスやレポーターマウスを駆使して、内耳領域のエイジングに対する進行抑制と機能回復(若返り)をサイエンスで目指します。治療モダリティについてはこだわることなく、遺伝子治療、mRNA医薬、核酸医薬品や低分子〜中分子化合物、あるいは食品やサプリメント、医療機器やSaMDなどと、先入観を排除して広く研究しています。

自己免疫性内耳炎・難聴に関する基礎研究

主任教授の藤岡は長年内耳領域の免疫・炎症反応の基礎研究を継続してきました(→学位論文)。現在は、当研究室ではHarvard大/Massachusetts Eye and Ear(Albert Edge教授)及び本学免疫学教室(末永忠広教授)との共同研究で、多種の遺伝子改変マウスを駆使して、側頭骨内(迷路)における抗原提示と、急性・慢性炎症についての基礎的研究を行っています。

リアルワールドデータ取得と多層臨床データの情報数理解析およびELSI研究

爆発的な情報量の増大により急速な進歩を遂げた現代の遺伝学は、疾患のみならず”体質”をも科学するポテンシャルをも有しています。一方で私たちの生活中におけるヒト生体データ取得環境も大きく変容し、スマートウォッチやスマートフォン、多機能ヘッドフォンや各種IoT機器により、多くの物理量が大量・容易かつリアルタイムに取得・収集できる時代が到来しています。本研究では山野邉特任講師, 大橋研究員を中心に、生物統計家やデータサイエンス企業等との広域な連携をもとに、リアルワールドデータ取得システムについて、アプリ開発*4からデータ転送システム、網羅的遺伝子解析から画像解析構築、そして線形混合効果モデルをベースとした統計モデルを駆使して、臨床情報による情報数理解析システムを元に構築し、MedTECHからHealthTECHへとその知見を広げていきます。インターネットのボーダレス化を念頭に、並行して、その倫理的・法規制的側面やセキュリティレベルについても、産学官連携によるELSI研究で深掘りしていきます。

*4 Yamanobe, Y., Fujioka, M., Ohashi, M. et al. Potential Usefulness of Tracking Head Movement via a Wearable Device for Equilibrium Function Testing at Home. J Med Syst 46, 80 (2022).

ACHIEVEMENTS

業績
 
 
 
 

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Generation and characterization of Slc12a2Em2 mice as a model of DFNA78, an autosomal dominant nonsyndromic hearing loss国際学会

Generation and characterization of Slc12a2Em2 mice as a model of DFNA78, an autosomal dominant nonsyndromic hearing loss

Hideki Mutai. IFOS2026, Istanbul, Turkey, 2026.9.8-13
2026年9月8日
T Cell-Mediated Inner Ear Dysfunction Following Breakdown of Immune Tolerance in Mouse Models全国学会・研究会

T Cell-Mediated Inner Ear Dysfunction Following Breakdown of Immune Tolerance in Mouse Models

Kengo Yamamoto, Chika Saegusa, Masato Fujioka. 第4回北里研究者サミット(DocTalk口頭発表), 北里研究所白金キャンパス, 2026.8.26
2026年8月26日
疾患iPS細胞を用いた難病の病態生理研究とアカデミア創薬全国学会・研究会

疾患iPS細胞を用いた難病の病態生理研究とアカデミア創薬

三枝智香、川野史帆里、政野優介、岩月正人、藤岡正人. 第3回北里研究者サミット(ポスター発表), 北里研究所白金キャンパス, 2026
2026年3月14日
Pathology of mice carrying exon 21-skipping variant of Slc12a2, a responsible gene of hereditary hearing loss DFNA78全国学会・研究会

Pathology of mice carrying exon 21-skipping variant of Slc12a2, a responsible gene of hereditary hearing loss DFNA78

Hideki Mutai, Yukiko Kuroda, Shinobu Noji, Saki Ichikawa, Koichi Matsuo, Satoshi Tanaka, Naoyuki Kataoka, Masato Fujioka, Tatsuo Matsunaga. 日本人類遺伝学会第70回大会, パシフィコ横浜, 神奈川, 2025.12.17-12.20
2025年12月17日
Clinical Features of COL11A2/COL2A1 Gene Variants in Stickler Syndrome Suspected from Hearing Loss全国学会・研究会

Clinical Features of COL11A2/COL2A1 Gene Variants in Stickler Syndrome Suspected from Hearing Loss

Satomi Inoue, Haruka Murakami, Kiyomitsu Nara, Reiko Muramatsu, Kayo Momozawa, Natsumi Yoshida, Yumika Fue, Yoko Karino, Hideki Mutai, Shujiro Minami, Kazuki Yamazawa, Tatsuo Matsunaga. 日本人類遺伝学会第70回大会, パシフィコ横浜, 神奈川, 2025.12.17-12.20
2025年12月17日
Genotype phenotype correlation in Usher syndrome and the related hearing loss全国学会・研究会

Genotype phenotype correlation in Usher syndrome and the related hearing loss

Haruka Murakami, Satomi Inoue, Kiyomitsu Nara, Reiko Muramatsu, Kayo Momozawa, Natsumi Yoshida, Yumika Fue, Hideki Mutai, Shujiro Minami, Kazuki Yamazawa, Tatsuo Matsunaga. 日本人類遺伝学会第70回大会, パシフィコ横浜, 神奈川, 2025.12.17-12.20
2025年12月17日
Clinical features of hearing loss and genotype-phenotype correlations in Alport syndrome caused by COL4A4 or COL4A5 variants原著

Clinical features of hearing loss and genotype-phenotype correlations in Alport syndrome caused by COL4A4 or COL4A5 variants

Matsuzaki S, Nara K, Mutai H, Katsunuma S, Sakamoto H, Hirose M, Wakisaka N, Adachi N, Asanuma S, Fujioka M, Matsunaga T. Sci Rep. 2025;15(1):43803. DOI: 10.1038/s41598-025-27772-6 / PubMed: 41398421
2025年12月15日
Advancing otologic surgery and surgical education with the 4K/3D exoscope: clinical utility of VITOM™ eagle国際学会

Advancing otologic surgery and surgical education with the 4K/3D exoscope: clinical utility of VITOM™ eagle

Kengo Yamamoto, Takaomi Kurioka, Taku Yamashita. 17th Japan-Taiwan conference on otolaryngology-head and neck surgery, Aichi, 2025.12
2025年12月1日
遺伝性難聴DFNA78の原因遺伝子SLC12A2に変異導入したマウスの病態解析全国学会・研究会

遺伝性難聴DFNA78の原因遺伝子SLC12A2に変異導入したマウスの病態解析

務台英樹、藤岡正人、松永達雄. 第35回日本耳科学会総会・学術講演会, 福岡国際会議場, 福岡, 2025.10.29-11.1
2025年10月29日
日本人小児の軽度・中等度難聴におけるMPZL2の頻度と臨床的特徴全国学会・研究会

日本人小児の軽度・中等度難聴におけるMPZL2の頻度と臨床的特徴

文入悠、奈良清光、務台英樹、南修司郎、阪本浩一、櫻井結華、宇田川友克、岡﨑鈴代、浅沼聡、守本倫子、森田訓子、内田育恵、細谷誠、小澤宏之、大石直樹、松永達雄. 第35回日本耳科学会総会・学術講演会, 福岡国際会議場, 福岡, 2025.10.29-11.1
2025年10月29日

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