概要

基本測定項目

平成25年10月現在、国内事業場の労働者1万人を4年間追跡したパネルデータが登録され、包括的調査票により個人属性、社会経済要因、職業性ストレス、保健行動を測定しています。 職業性ストレスは、伝統的な要求度-コントロールモデルをはじめとして、最近追加された、努力-報酬不均衡モデル、組織不公正性、ワーク・エンゲイジメントなどを、国際的に確立された調査票で測定しています。 可能な事業場ではWHO国際統合診断面接WEB版より、大うつ病、不安障害の発症を評価しています。

さらに、健康診断の機会を利用して、ストレスと身体疾患を結ぶ可能性のあるバイオマーカーを測定しています。 ほぼすべての事業場で、健康診断を利用して血圧、身長、体重、腹囲と血液検査値(血糖、HbA1c、血中脂質)を測定していることに加えて、可能な事業場では、ストレス関連遺伝子や炎症マーカー、アクチウォッチを使用した客観的な睡眠の指標を測定しています。

基本測定項目
ストレスと疾患を結ぶメカニズム

今後の予定

J-HOPEでは、すでに4年間の追跡を行っている大規模労働者多目的パネルデータ(1万人)をさらに4年間追跡し、新しいモデルを含む職業性ストレス要因が健康アウトカム(循環器疾患、がん、総死亡、自殺)の発症に与える影響を日本人労働者で検証することになっています。 また、職業性ストレスが健康障害を引き起こす過程を媒介・緩衝するメカニズムを、遺伝子多型を含むバイオマーカーを測定して明らかにすることを目的としています。

本研究から期待されること

  1. 収入や教育といった社会経済的要因や職業性ストレスが労働者の健康に与えるインパクトが検証されます。
  2. 職業性ストレスの効果に影響を与えたり、職業性ストレスの有害影響に脆弱な遺伝的変異が明らかにされる可能性があります。
  3. パネルデータという構造を活かして、職業性ストレスがバイオマーカーに与える影響のみならず、バイオマーカーが心理的ストレスに与える逆方向の影響がないかを明らかにできます。
  4. さらに、本研究の成果をもって、集団的には多様なストレス要因別の予防方策の立案、個人には遺伝子素因別の保健指導や臨床的介入等、職業性ストレスによる健康障害に対する将来的な予防法の確立に貢献することが期待されます。