北里大学医学部薬理学教室の歴史は1970年の設立から始まります。
歴代教授は鹿取信教授(1970〜1996年)、馬嶋正隆(1997年〜2020年)、天野英樹(2020年〜)であります。
過去50年一貫して病態におけるオータコイドの役割について探求しております。
馬嶋教授になり血管新生及びリンパ管新生のmain themeにシフトし、更に天野はそれに加え、呼吸器疾患モデルにおけるVEGFR1-TKシグナルの役割について探究を始めました。

薬理学は薬が生体に中に入ったら薬がどの様に変化し身体にどの様な影響を与えるかについて研究する学問です。
薬理学には実験動物を用いて薬と生体の相互作用を解き明かす基礎薬理学と薬物の人体における作用と動態を研究し合理的薬物治療を確立する臨床薬理学からなります。

副作用はどうして起こるか、防ぐにはどうすればいいかも研究の対象になります。

新薬への挑戦

〜北里ブランドの構築〜

天野単位
研究内容
教育内容

天野単位

新規治療薬の開発の実現を目指す

天野 英樹
北里大学医学部を卒業後、東京女子医大日本心臓血圧研究所の循環器外科(現:心臓病センター)に入局。
その後、北里大学大学院医療系研究科に入学。当時薬理学の教授であった馬嶋正隆先生の下でプロスタグランジンの血管新生制御機構について研究。
学位修得後、米国のコーネル大学(Ronald G Crystal教授)に留学し、血管新生の遺伝子治療、血管新生における血小板の役割について研究。
帰国後、2011年から基礎研究者に転身して現在に至る。

研究内容

自分の実験結果を信じ、真理に近づく!

虚血改善過程におけるプロスタグランジンの役割
プロスタグランジン(PGs)は血管新生に重要な役割を担っております。虚血筋肉組織にマクロファージ、制御性T細胞(Treg)などの様々な細胞が浸潤します。現在、マウスで下肢虚血モデルを作成し、虚血改善過程におけるPGsの役割を検討しております。

呼吸器疾患におけるVEGFR1-TKシグナルの役割
代表的な血管新生促進因子の一つであるVascular Endothelial Growth Factor(VEGF)は肺組織に豊富に存在しています。呼吸器疾患の病態の進展にVEGF及びその受容体(VEGFR1,VEGFR2)の発現が関与しています。現在、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)モデルや肺気腫モデルを作成しこれらの病態進展におけるVEGF受容体特にVEGFR1に重点を置き検討しています。

急性肝障害の修復機構の解析
急性炎はウイルス、アルコール、脂肪肝、薬剤、自己免疫などが原因で起こる。重症化すると肝不全に陥り重篤となる。現在、様々な遺伝子欠損マウスで様々な薬剤を用いて肝障害モデルを作成し、肝臓組織の障害の発生機序及び修復機構について検討している。

腎障害における腎の線維形成メカニズムの解析
慢性腎臓病(CKD)の組織障害の指標として線維化は確立しているが、線維化を標的とした治療が腎臓の機能回復に寄与するか否かについて明らかな見解が得られていないのが現状である。この問題を解決するために、様々な遺伝子欠損マウスで片側尿管結紮(unilateral ureteral obstruction; UUO)を作成し、尿細管障害と腎間質における炎症及び線維化の程度について検討している。

教育内容

北里医学スピリットの継承と伝達

A.学部教育
薬理学教室では主に第二学年の医学部医学科の薬理学に関する講義をしております。

1)薬理学総論
(1)総論:薬物が作用する基本形式。受容体と情報伝達。薬物を投与してから、作用点に達するまでの経路、排泄。安全性と副作用。医薬品開発などについて学ぶ。
(2)自律神経系:交感神経系と副交感神経系の作用とそれを修飾する種々の薬物について学ぶ。高血圧症や消化器系疾患の治療薬の基礎となる。
(3)ケミカルメディエータ:炎症、高血圧、血栓といった種々の病態を引き起こしているのはこの群に属する物質群。これらを学ぶことでより病態の基礎が理解できる。また、これらに対する治療薬も学ぶ。

2)薬理学実習
薬理学総論及び系別総合の講義で学んだことを実習することで薬物の作用機序の知識の定着をはかる。
実習は下記に記したテーマを小グループ(5−7名)でローテートして行う。
実習テーマ
1.実習について(実習の説明:全体 主に評価方法や注意事項について説明します)
2.アセチルコリン の蛙腹直筋収縮作用(小グループ)
3.臨床薬理(小グループ)
4.急性炎症のメディエーター(小グループ)
5.摘出平滑筋に作用する薬物(小グループ)
6.中枢神経作用薬(小グループ)
7.血圧・呼吸に作用する薬物(全体)
8.実習講義(実習のまとめ:全体)
実習の理解を深める為に、各自がレポートを提出する


3)器官系別総合教育
第二学年後期から第三学年にかけて薬理学各論を学びます。
器官系別総合教育は北里大学独自の教育カリキュラムで基礎医学各論を核とし、病気の成立(病因、病変。病態)を理解できる様に努める。講義内容は臨床への橋渡し含むが臨床医学の通論ではない。

B.大学院医療系研究科
薬理学教室では分子薬理学に関する講義を行っております。
教室の研究テーマに関連した研究もしくは希望した研究について、研究の立案から実験、結果の解釈、そして論文作成を行う過程を担当教員の指導のもとでおこない学位の取得を目指します。

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