Welcome to Sakagami Lab at Kitasato University

研究内容紹介

研究内容紹介

真核細胞は、細胞膜により外界と隔離された細胞質内に生体膜で包まれた細胞小器官が分布し各小器官はエンドゾームを介した小胞輸送によりタンパク質や脂質膜成分のやり取りが行われています。この小胞輸送は、単に細胞の恒常性の維持のみならず、細胞の極性形成、運動性、細胞分裂などの幅広い機能に関与することが明らかになってきました。
 私たちの研究室では、小胞輸送に関わる中心的な低分子量GTP結合タンパク質であるADPリボシル化因子(Arf)による小胞輸送経路の神経細胞における機能の解明を目指しています。特に、Arfファミリー分子のうち、細胞膜とエンドゾーム間の小胞輸送や細胞膜直下のアクチン細胞骨格制御に関与するArf6に着目し、(1) シナプス後膜における可塑性制御機構 (2) 神経突起の形成機構 (3) 発達過程における神経細胞移動 (4) 網膜視細胞リボンシナプスでの機能の解明を目指しています。今後は、神経変性疾患や神経発達障害、慢性疼痛の病態生理におけるArf小胞輸送経路の役割に関しても進めていく予定です。

(1) シナプス後膜での可塑性制御機構
Arf6は、他の低分子量GTP結合タンパク質と同様にグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)によりGDP型からGTP型に変換されて、種々の下流効果分子との相互作用や脂質酵素の活性化を介して細胞機能を発揮します。Arfに対するGEFは、GEF活性に必須のSec7ドメインを持ち、哺乳類では15種類の分子種が同定されています(図1)。 
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 私たちは、Arf6のGEF活性を持つEFA6, BRAG/IQSEC, Cytohesinファミリーに着目し局在と分子ネットワークを解析した結果、EFA6ファミリーのEFA6A, EFA6C, EFA6D, BRAG/IQSECファミリーのBRAG1, BRAG2, BRAG3が神経系に多様な発現様式を示すこと(図2)、種々の足場タンパク質との相互作用を介してシナプス後膜に豊富に局在すること(図3)を明らかにしてきました (業績79, 85, 101, 113, 118, 113)。
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なかでもBRAG1は、近年、X染色体連鎖性知的障害の原因遺伝子産物として、シナプス可塑性のうちAMPA型グルタミン酸受容体のエンドサイトーシストの制御を介した長期抑圧に関与することが報告され、高次神経機能における役割が注目されています。私たちの研究成果は、シナプス後膜でのArf6の多様な活性制御と機能を解剖学的に証明したものです。現在、遺伝子欠損マウスなどを用いて高次神経機能における個体レベルでの機能の解明を目指しています。

(2) 神経突起の形成機構
神経突起の伸展には、細胞骨格系とともに小胞輸送による突起先端部への細胞接着分子や受容体の供給や突起形成に伴う細胞膜成分の補給が必要となります。これまで私たちは、Arf6-GEFのEFA6Aの恒常不活性型遺伝子の初代海馬培養細胞への導入により、樹状突起の分岐が著明に増加することを見出し(図4)(Sakagami et al., 2004)、EFA6A-Arf6経路の樹状突起形成機構の解明を進めています。

図4

これまで、酵母ツーハイブリット法により、細胞接着関連分子のVezatin (業績93)、Pilt (業績112), 大腸癌患者血清由来の腫瘍関連抗原であるSDCCAG3 (serologically defined colon cancer antigen-3) (業績135)を活性型Arf6の新規標的分子として同定し、なかでもVezatinが樹状突起形成に関与することを見出しました (業績93)。

(3) 発達過程における神経細胞移動 
発達過程においては、神経細胞は脳室層や脳室下層で分裂した後、それぞれの脳領域に移動しシナプスを形成し機能を発揮します。この神経移動は進化に伴う神経回路形成の複雑化を可能にしていると考えられます。私たちは、神経細胞移動におけるArf6の役割と分子機構を子宮内電気穿孔法により検討した結果、大脳皮質の層形成過程において、Arf6が、Rab11-FIP3との相互作用を介したN-カドヘリンを含む小胞輸送により、中間層での多極性移動を制御することを見出しました(図5)(業績136)。近年、Arf6がインテグリンやカドヘリンの細胞膜での発現調節を介して、癌細胞の浸潤・転移に関与することが明らかになっており、神経細胞移動機構との共通性が示唆されます。
画像の説明また、Arf6の標的分子のひとつであるホスファチジルイノシトール4-2リン酸5キナーゼ (PIP5KIγ)も神経細胞移動に関与することを明らかにしました (業績116)。

(4) 網膜視細胞リボンシナプスでの機能
網膜の視細胞は視覚刺激に対して持続的に神経伝達物質を放出するためにシナプス前部にシナプスリボンと呼ばれる特殊な構造を持ちます。私たちは、Arf6-GEFであるBRAG1が、網膜視細胞において、シナプスリボンの主要な足場タンパク質であるRIBEYEと複合体を形成する新たなシナプスリボンの構成分子であることを報告しました (業績89)。
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また、Arf6-GEFであるEFA6AやBRAG2, 3のリボンシナプスでの特異な局在を明らかにしてきました (業績83, 113)。現在、視覚伝達におけるBRAG1-Arf6の機能解明を進めています。

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