遺伝子高次機能解析センター

 

北里大学医学部三十周年記念事業の一環として永年の懸案であった動物研究棟建設が認可され、工事が始まりました。生命科学の総合大学という類例のない特徴をもつ北里大学の医学部動物実験施設としては現在の施設は誠に情けない状況にありました。イヌ等の中動物の実験を中心に設計された現在の動物施設は構造、スペース、空調、動線などさまざまな点で限界に来ており、近年急増してきた小動物実験の需要に全く対応しきれない状態でマウス研究の大部分が医療衛生学部の動物実験施設を間借りすることによりやり繰りしてきたのが実情です。このため永年に渡って時代の要請に対応できる新しい施設の必要性が叫ばれてきましたが、ようやく実現の運びとなったことは喜ばしいことで、研究の活性化が大いに期待されます。














動物研究棟の概要


建物は五階建て(地下一階、地上四階)で、M4 号館( RI 棟)の裏地に位置し、建物の総面積は5,335平米となっています。
その1、2、3階が動物飼育区域となっておりそれぞれの階は以下のようになっています。
地階:小動物受け入れサービスヤード、管理室、水棲動物室、研究実験室、機械室
1階:イヌ、ブタ,ウサギ, ラット、鳥類飼育室などの中動物エリア及びX線室エリア、中動物および汚物の搬出口並びにマウス用特別研究エリア、

2階:実習棟からの連絡口、感染実験エリア、低清浄度エリア(小動物)、クリーン化室、洗浄室など
3階SPF エリア(小動物)、発生工学エリア、洗浄室など
4階:倉庫、機械室

それぞれのエリアの機能は
中動物エリア:イヌ、ブタ、ヤギ、羊等の中動物の飼育・実験
ウサギエリア:ウサギ、モルモットなどの飼育・実験
感染実験エリア:小動物を用いた感染実験のための飼育室。P3 対応の部屋も用意
低清浄度エリア:指定業者以外から搬入される小動物の飼育・実験、および検疫
クリーン化室:低清浄度エリアの動物のクリーン化によるSPF エリア内への導入 および受精卵凍結による保存と胚バンク
SPF エリア:指定業者から搬入する SPF 小動物、SPF エリア内で生まれた動物、クリーン化した動物専用の飼育・実験
発生工学エリア:トランスジェニック、ノックアウト動物の作成

特別研究エリア:SPFマウスの飼育と実験、特に行動実験

このように基本的に現行の動物施設の機能を全てカバーした上、小動物のためのスペースを大きく拡大し、さらにトランスジェニックマウス、ノックアウトマウスの作成などの生殖工学も施設内でできるようになります。清浄度によるエリアわけを明確にし、各エリアが完全なバリア空調システム、完全に独立した動線からなるように設計されており利用者の混乱・不便を最小限におさえてあります。各エリアは更衣室が入り口になっており、ここの出入りは利用者に配られる磁気カードにより開けることができます。利用者はあらかじめ登録したエリアの入り口のみ解錠できる仕組みになっており間違えて必要のないエリアに入る事故は起こらないように運営されます。

このようにエリアごとの動線を完全に分けることにより汚染事故が起る機会を最小限にし SPF の環境維持に対する脅威を限り無くゼロに近く保つことができます。低清浄度エリア、クリーン化室はこの施設独自の試みで、様々な遺伝的特性を持つ動物の外部からの導入を円滑にする全く新しい概念から設計されたもので世界でも初めてのものです。この特別な機能により最先端の研究を柔軟に支える一方 SPF エリアの管理を妥協・例外のない完璧なものにし最高のクリーン度と安全性を確保することを可能にします。中動物エリアでは六〇頭以上のイヌの飼育が可能でその他ヤギ、羊、ブタ等を飼育するペンも充分なスペースをとってあります。実験動物としてイヌよりミニブタが多く使われる様になる事も想定し多目的室を設けイヌ室もミニブタに転用可能に設計してあります。実験室のスペースもシールド実験室など現在の実験室より多くの機能を持っています。当面使われないような実験機器を収納する倉庫は中動物エリア内だけでなく四階にもあり、現行のようにわけの分からない機械の間の狭いスペースで実験するということはなくなると思います。もうひとつこの建物の特徴は天井裏のスペースが人が立って歩ける様たっぷり取ってある上、建物の両面にメンテナンススペースがあり配線・配管の検査修理は各エリアに入ることなく直接目で見て行える様にしてあります。これは日常的なメンテナンスが便利であるだけではなく五年十年後には非常に役立つ筈です。
 この建物の二、三階部分とそれらの機能維持に関わる部分は文部科学省のハイテクリサーチセンターの補助を受け遺伝子高次機能解析センターとなっており亀谷教授が代表者となるゲノム改変動物を用いた遺伝子高次機能とその変調の解析というプロジェクトが五年間推進されます。これが新世紀の本学部の飛躍的な発展のひきがねとなることを願っております。